テスカトリポカとは?アステカ神話の神の一柱
テスカトリポカとは、アステカ神話の神の一柱です。アステカ神話は多神教なので、多くの神が存在しますが、テスカトリポカは中でも特に強大な力を持つ神として畏れられています。
また、テスカトリポカは非常に複雑な性質を持つ神でもあります。そもそも、古代アステカの神話は曖昧な描写や複雑な設定が多く、かなり難解な神話なのですが、とりわけテスカトリポカは複雑で、そのさまざまな性質や側面は、時に別の神様と同一視される事もありました。
そこでここでは、偉大な神として敬われ、また邪悪な悪魔として恐れられたテスカトリポカという神について詳しく解説していきます。
テスカトリポカの名前の意味
テスカトリポカの名前は、「煙りに覆われた鏡」という意味です。「テスカトル」が「鏡」を意味し、「ポルカ」が「煙り」を意味します。
この「煙りに覆われた鏡」という意味は、黒曜石を表していると推測されています。漆黒の輝きを持つ黒曜石は、煙が周りを覆っているかのように見え、神秘的な鉱石だったのです。
黒曜石の輝きは過去や未来、運命などを意味すると考えられていました。
こうした印象から、黒曜石はメキシコやアメリカの北西部など、メソアメリカと呼ばれる地域で祭祀の道具に用いられていたとの解説がされています。
このように神秘的で強い魅力を持つ石だからこそ、テスカトリポカの名前の由来になったのだと言えます。
テスカトリポカの4つの面
テスカトリポカには、黒・青・赤・白の4つの面があったとされています。
これら4つの面は、それぞれ別の神であるとも言われていますし、また、テスカトリポカの持つ異なる4つの面を意味するとも言われています。
神話の記述が抽象的で複雑なため、複数の解釈が存在しているのです。
青のテスカトリポカは軍神ウィツィロポチトリと、白のテスカトリポカは文明の神ケツァルコアトルと、赤のテスカトリポカは穀物の神シペ・トテックとして信仰していた地域もあります。
しかし、近年の研究ではこれは誤った説だろうと解説されています。
アステカ神話の記録や記述は、解釈が非常に難しく複雑なので、このように近年の研究によって考えが改められることも少なくありません。
ポイント
- テスカポリトカの名前は、「煙に覆われた鏡」という意味で、黒曜石を表していると推察されます。
- テスカトリポカには、黒・青・赤・白の4つの面があると言われています。
- これら4つの面は、別の神であるという考えと、一人の神の4つの異なった面という考えとがあります。
- アステカ神話は、解釈が非常に難しく複雑であるため、後の研究で考えが改められる事が多々あります。
テスカトリポカはケツァルコアトルのライバル
テスカポリトカと、時を同じくしてアステカ神話に登場するケツァルコアトルはライバルであったと伝えられています。
神話の解説によると、二人の神は太陽神の座を巡って、何度も争ってきました。
最初はテスカトリポカが太陽神だったのですが、それを不満に思ったケツァルコアトルは、テスカトリポカをこん棒で殴ってその座を奪ってしまいました。
しかし、しばらくの後、テスカトリポカはジャガーに姿を変えてケツァルコアトルを蹴り飛ばし、再び太陽神の座に返り咲きます。
3番目に太陽神の座についたのは、雨や雷を司る神トラロックでした。しかしトラロックの時代は短く、ケツァルコアトルが火の雨を降らせたことでその座から転落してしまいました。
次に太陽神として世界を支配したのが情熱の神チャルチウィクトリエです。この第4の世界も長くは続かず、大洪水によって終焉を迎え、第5の世界が始まりました。現在はこの第5の世界であるとされています。
この太陽神の座を巡る争いの経緯を見ても、テスカトリポカとケツァルコアトルはライバルであった事がわかりますね。
ケツァルコアトルとは人間に文明を授けた神で、文化や平和を司っています。なので、血の気が多く好戦的なテスカトリポカとは相性が悪かったのかもしれません。

アマテラス
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