阿闍梨(あじゃり)とは?
葬儀などでお世話になる僧侶の呼び方で最も知られたものに「お坊さん」や「ご住職」などがあります。しかし、僧侶の中には長年厳しい修行を重ね、仏教にまつわるさまざまなものを学んだ結果、徳が高いといわれる存在になる方も多いです。
徳が高く、後から仏門に入った弟子を指導できる立場の僧侶を「阿闍梨(あじゃり)」といいます。古代インドのサンスクリット語「アーチャーリャ」からきており、当時信仰されていたバラモン教(ヒンドゥー教の源流)でも上級階級出身の入門者への指導に当たった宗教者を指し、仏教でも修行の指導に当たる僧侶を意味する言葉となりました。
日本仏教では、天台宗や真言宗(以下、密教)で弟子たちを指導する資格がある徳や学識を備えた僧侶のことを指します。そして、現在では密教について一通り学んだ僧侶に与えられる資格を意味する言葉です。
ポイント
- 阿闍梨とは、高い徳と深い学識を備えた僧侶
- 日本の場合、密教を一通り学んだ僧侶に与えられる

編集部
阿闍梨の種類
阿闍梨には全部で5つの種類があります。
最初に挙げられるのが教授阿闍梨と呼ばれるもので、仏教の教えについて弟子に教えたり指導したりすることができる僧侶のことです。
次に挙げられるのが伝法阿闍梨で、一通りの修行を終えた弟子に儀式(伝法灌頂:でんぽうかんちょう)の場で阿闍梨の位を授けられた僧侶のことで、密教では伝法阿闍梨になって初めて一人前の僧侶とみなされます。
3番目が大阿闍梨で、阿闍梨の中でも特に徳が高く、深い学識を備えた僧侶のことです。ただし、大阿闍梨になるには阿闍梨になるまでに経験したものよりもさらに厳しい修行(千日回峰行など)をこなす必要があります。
4番目が七高山阿闍梨で、朝廷が認めた寺院(比叡山延暦寺など)での五穀豊穣を祈る儀式で導師を務めることができる僧侶のことです。天気観測技術が未発達だった当時、五穀豊穣を祈ることは国を運営するうえでも非常に重要だったため、この阿闍梨はよほど優秀な僧侶でなければ務まりませんでした。
最後が一身阿闍梨で、これは皇族や摂家(摂政や関白を輩出した家)の子弟がその高貴さのために早いうちに資格を得た人物を指します。
ポイント
- 阿闍梨の種類は5種類ある
阿闍梨の五明
阿闍梨の資格を得るには五明と呼ばれる5つの学問分野に精通している必要があります。五明として挙げられるのが、お経や真言の発声にまつわる声明(しょうみょう)、仏教関係の技術にまつわる工巧明(くぎょうみょう)、医療や治療にまつわる医方明、仏教の理解に不可欠な論理や言語にまつわる因明、仏教の教義にまつわる内明の5つです。
ただし、現在の日本密教では声明と内明の一部、サンスクリット語の筆記といった密教でもごく基本的なものを学ぶことが阿闍梨になるうえで重要とされています。
ポイント
- 声明
- 工巧明
- 医方明
- 因明
- 内明
阿闍梨の資格を表す「阿闍梨戒」
阿闍梨として守るべきものを示したものが「阿闍梨戒」です。密教で定められた戒律に違反しないことや全てを尽くして他の僧侶に尽くすこと、密教の伝統的な教えを軽視しないことなどが定められています。
なお、阿闍梨の立場にあるにもかかわらず阿闍梨戒に対する違反がはなはだしい場合は、阿闍梨の資格をはく奪されるることになりかねません。
ポイント
- 「阿闍梨戒」は、阿闍梨が守るべきとされる決まり
- 阿闍梨戒に著しく違反した場合、阿闍梨の資格を失う
阿闍梨についてまとめ
今回は阿闍梨について見てきました。阿闍梨とは密教で弟子たちの修行を指導する立場にある僧侶のことで、徳の高さと学識の深さでなることができます。
阿闍梨には全部で5つの種類がありますが、いずれもそれなりの条件をこなすことがなるための道です。また阿闍梨になるには五明と呼ばれる分野に精通することが求められます。また、阿闍梨は「阿闍梨戒」の順守が必要です。
阿闍梨とは仏の教えを深く学び、厳しい修行を重ねた僧侶だけが受けられる資格といって良いでしょう。
この記事の関連書籍はこちら!

編集部
阿闍梨は天台宗などで徳の高い僧とされる