オオゲツヒメとは
オオゲツヒメ(大宜都比売)は食物を司る女神です。
オオゲツヒメはイザナギ(伊邪那岐)とイザナミ(伊邪那美)の子であり、粟の国(現在の徳島県)の神格化として生まれました。
しかし高天の原から追放されたスサノオに殺されたことで、五穀の起源と言われる神になりました。
オオゲツヒメの別称「ウケモチノカミ」
オオゲツヒメの五穀起源神話は古事記でのみ描かれています。
しかし、日本書紀にも類似した神話があり、こちらは「ウケモチ(保食神)」が登場します。
“オオゲツ”の「宜(ゲ)」、“ウケモチ”の「ウケ」は食物を表しており、神話の内容が非常に類似していることから同じ神であると考えられています。
同じように食物を司るトヨウケヒメ(豊宇気比売神)やウカノミタマ(宇迦之御魂神)も同神であると言われています。
大宜津比売(オオゲツヒメ)に関する神話
古事記・五穀起源神話
古事記では、全財産を押収され、高天原を追放されたスサノオ(須佐之男命)が登場します。
オオゲツヒメから鼻や口、尻から様々な食物を取り出して調理して振る舞われたスサノオは怒り、オオゲツヒメを殺めてしまいます。
すると、オオゲツヒメの亡骸(なきがら)の頭からは蚕が、両の目からは稲の種が、両の耳からは粟が、鼻からは小豆が、女陰からは麦が、尻からは大豆が生まれ、身体はすべて植物となりました。
そこでカミムスビ(神産巣日御祖命)がこれらの植物を五穀の種子としました。
日本書紀
日本書紀では、オオゲツヒメとスサノオではなく、ウケモチとツクヨミ(月読命)が登場します。
ウケモチから口から魚や獣を取り出して調理して振舞われたツクヨミは怒り、ウケモチを殺めてしまいます。
これを見たアマテラスがアメノクマノウシ(天熊大人)派遣すると、
ウケモチの亡骸の天辺には牛馬、お腹のなかには稲、陰部には麦や大豆が生まれたため、アメノクマノウシはこれを採ってアマテラスに献上しました。
アマテラスは「これは人間が食べるものだ」と喜び、それらを五穀の種子としました。

編集部
オオゲツヒメと徳島県の関係
イザナギとイザナミが淡路島を生み終えたあと、二番目に伊予の男女二つの名前を持つ島としてイヨノフタナシマ(伊予之二名島)を生みました。これが現在の四国です。
一つの体に顔が四つあり、その一つである粟の国(現在の徳島県)をオオゲツヒメといいました。
粟の国という名前から、この地では太古から粟(あわ)の栽培が盛んで、山地で焼き畑を行う光景が繰り広げられていたと想像されます。
国名に穀物が冠された唯一の国でしたが、奈良時代以降は、風土記の編纂にあわせて、名の表記が粟から阿波へと変わりました。
五穀の女神オオゲツヒメ
- オオゲツヒメ(大宜都比売神)は国産みでは『粟の国神』として生まれ、穀物や養蚕の起源となりました。
- 『大宜都比売神』は『オオゲツヒメノカミ』と読みます。『ウケモチノカミ』と同一視されています。
- 古事記ではスサノオに、日本書紀ではツクヨミに殺され、その亡骸から穀類や蚕、牛馬が生まれます。
オオゲツヒメのご利益
オオゲツヒメの主なご利益として「農業守護」「漁業守護」「開運招福」「厄除け縁結び」「子宝」「家内安全」などがあります。
オオゲツヒメもウケモチも災難により思いがけない死を迎えますが、その亡骸から五穀豊穣をもたらし、五穀・養蚕の起源となった神として農耕、織物の神として神格を広げました。
養蚕が盛んであった頃は、養蚕守護の祭神として全国的に崇敬されました。
オオゲツヒメを信仰する神社
上一宮大粟(カミイチノミヤオオアワ)神社
上一宮大粟神社には粟国の祖神であり、地域一帯に粟を撒いたとされるオオゲツヒメが鎮座しています。
竹駒神社
竹駒神社(宮城県岩沼市)は衣食住の守護神として、ウカノミタマ・ウケモチ・ワクムスビを祀っています。

編集部
オオゲツヒメについてまとめ
“神の死により穀物がもたらされる”というオオゲツヒメの五穀起源神話ですが、広く世界で類似した神話の存在が指摘されています。
例えば「ハイヌウェレ神話」や「大地母神(だいちぼしん)」です。この死体から作物が発生する形式の神話をハイヌウェレ型神話といい、オオゲツヒメの五穀起源神話もこれに含まれます。
オオゲツヒメやウケモチを祀る神社を訪ねて、死と再生を具現した神々に触れてみませんか。

編集部
オオゲツヒメ(大宜都比売)は穀物や養蚕の起源神