
辻林クン
未確認巨大生物/UMA ホグジラとはどんな生き物?
米国で「伝説の巨大ブタ」として知られるホグジラは、ネッシーや河童、翼猫とともに未確認生物(Unidentified mysterious animal、UMAユーマ)に名を連ねていました。現在はリストからはずれています。明らかになったホグジラの正体について説明していきましょう。
ホグジラの正体は?巨大イノシシ?
ホグジラは家畜を襲い、人間を恐れない獰猛な動物と危険視されていました。米・ジョージア州で2004年に仕留められたホグジラを調査した結果、噂のホグジラは巨大化したイノブタであるとわかりました。このホグジラはハンプシャー種のブタとイノシシのDNAをもつ混血種だったのです。そもそもイノブタとは、イノシシの成長を早め、良質な肉を得るためにブタとかけあわせて作られた品種でした。
ホグジラの名前の由来・別名は?
「ホグジラ」(hogzilla)という名前の一部に、日本生まれの(架空)巨大怪獣、ゴジラが使われています。ホグ(ブタを表す英語hog)とゴジラ(godzilla)を合わせて、ホグジラ(hogzilla)です。米国人が発音すると「ホジラ」と聴こえるので、響きがより怪獣っぽくなります。
ホグジラの見た目がイノシシ寄りのため、巨大イノシシをもれなくホグジラと呼ぶひともいれば、あくまでホグジラを巨大ブタと呼ぶひともいます。米国では、他にも次のような呼び名があります。
hogzillaの米国での別名
- メガホッグ(mega hog)・ジャイアントホッグ(giant hog) ・・・とにかく巨大と伝わる名です。
- ホグコング(Hog Kong)・・・キングコングを連想させます。
- モンスターピッグ(monster pig)・・・怪物。
- 呪われたイノシシ(coursey hog)・・・ひどい名ですが意味深です。
ホグジラの大きさは?
ジョージア州のホグジラは体長2m、体重360kg、牙の長さは10cm以上、2007年にアラバマの少年がハンティングした個体の体長は2.8m、体重476kgでした。
数年間ノースカロライナの住民を恐怖に陥れていた「ホグジラ」は、2014年に退治され、230kgのヘビー級イノシシと判明しました。
巨大イノシシでは、東欧で270kg、ロシアで肩の高さが1.7m、535kgが報告されていますが、これらはイノシシが突然変異した希少種でホグジラとは異なります。家畜のブタは食肉用に大型に改良されたものもあるため、ホグジラ並みの300kgサイズは珍しくありません。

辻林クン
ポイント
- hog(ブタ)とgodzilla(ゴジラ)を融合して命名されました。
- 野生化したブタとイノシシが交配したイノブタが巨大化したものです。
ホグジラの存在は都市伝説?
巨大なホグジラが人里に出没することは人間にとって脅威です。その一方で、こんなに巨大なイノシシ(ブタ)が一体どのようにして棲息しているのか、人々の興味を引きつけずにはいません。センセーショナルで神秘的なホグジラは十分に都市伝説と言えます。
巨大化の原因は?
ホグジラがここまで巨大化した原因は何なのでしょう。
ブタはイノシシを家畜化するために品種改良された動物です。養豚場から逃亡したブタが野生化したとき、先祖のように全身をおおう剛毛と牙を手に入れました。さらにイノシシと交配してホグジラが誕生しました。ホグジラは混血種です。ブタの人怖じしない性質や賢さ、イノシシの繁殖力や食欲がそなわりました。
ただ、大型化したブタの遺伝子が混入したというだけでは、ホグジラの巨大化を説明できません。また、逃げ出した個体が近在する養殖場で成長促進剤入りの飼料を食べたとの説もありますが、推測の域を出ていません。
日本にいたホグジラ
日本にも巨大化したイノシシ型UMAがいます。1970年に京都で捕獲された体長1.8m、体重130kg、薄青い目と10cm以上の鋭い牙をもっていました。「イノゴン」と命名されますが、病気か突然変異でホルモンのバランスがくずれて巨体になったイノシシでした。
その後も、体長1.8~2m、体重200~240kgの大型が徳島、岐阜、滋賀県などで捕獲されています。これらは、イノブタ、野生化したブタとイノシシの混血種、良好な栄養環境にいたイノシシなど、背景はさまざまです。日本でホグジラの現れる日が来ないとは限りません。
ホグジラとおっことぬしの関係
ホグジラの映像がテレビで放映されたとき、宮崎駿のアニメーション『もののけ姫』に登場するイノシシ族の王「おっことぬし(乙事主)」を思い浮かべた人が多かったようです。
おっことぬしは齢500歳ながら神的な力をもち、シシ神の森を破壊する人間と戦うため一族を率いて海を越えてきました。誇り高いおっことぬしは、「イノシシ族を軽んじるようになった人間が、いずれ食糧として一族を狩ろうとするのでは」と案じています。死に直面したとき、人間への恨みや怒りを爆発させ、タタリ神になりかけます。物語は、動物神、シシ神、森を死に追いやり、実は自分たちの生命の源を失ったことに気づかない人間が描かれます。
日本人は古来、イノシシを山の神の荒ぶる化身と敬い、祟りをおそれて祀ってきました。古事記のヤマトタケルは、岐阜と滋賀の県境にある伊吹山に行き、出会ったを山の神と見抜けずに、使者と軽んじたため死に至ります。
奈良県・吉野には、熊笹を背中に生やした猪笹王(いのざさおう)の話があります。撃ち殺された大イノシシが人を食べる一本足の妖怪となりますが、力を封じられて12月20日の一日だけ厄日として襲ってきます。
各地に山の神のイノシシが祟り神になる話や白イノシシの話が伝わり、現代でも、白色や金色のイノシシを見るのは縁起がいい、幸運になると信じられています。
そんな文化的背景をもつ日本人には、人間の都合で品種改良され、野に戻って異形の姿になったホグジラの姿は、人間に反旗をひるがえした祟り神に映るかもしれません。おっことぬしやシシ神と同様に、ホグジラの存在は人間にむけた自然の神々、もののけの警鐘とも受けとれます。
ポイント
- 巨大化した原因は諸説ありますが、まだ不確定です。
- 日本にはイノゴンと名づけられた巨大イノシシがいます。
- ホグジラとおっことぬしはもののけを象徴する存在です。

編集部
ホグジラまとめ
放射能を浴びて変異したゴジラや、「もののけ姫」に登場するイノシシ族のおっことぬしは人間に牙をむいて狩られました。なぜか巨大化してしまったホグジラもまた狩られる存在です。ホグジラという都市伝説から何かを感じ取れたら良いですね。

編集部