
フロイト先生
イマジナリーフレンドとは?その意味について
空想/架空の友達「イマジナリーフレンド」をご存知ですか。イマジナリーフレンドとは精神医学用語で、主に幼児期に現れる空想の中の友達です。大人に近づくと、ほとんどの場合はイマジナリーフレンドのことを忘れてしまいますが、なかには大人になってもずっと覚えている人もいます。
最近では、社会学者の古市憲寿(ふるいち のりとし)さんが、「寝る前にイマジナリーフレンドと話している」と発言して話題になりました。
多くの人が幼少期にいた
北米で行われたアンケート調査では、3~7歳の子供の約半分がイマジナリーフレンドを持っていたそうです。
また、どのくらいの年齢からイマジナリーフレンドが現れたかという聞き取り調査には、2歳半~3歳半くらいが多いという結果のほか、5~6歳と10歳でピークがあり平均は7歳だったという結果もあります。
本人は覚えていないだけで、多くの人がイマジナリーフレンドがいた可能性もあると言えるでしょう。子供の頃にイマジナリーフレンドがいるのは、精神的に問題があるのではなく成長過程で起こりうる自然な現象なのです。
成長過程では誰にでも起こりうる自然な現象
幼児期の初めは一人遊びをしていて、他の子供と一緒に何かをして遊べるようになるのは3歳くらいからと言われます。さらに友達の気持ちを汲み取ったり、精神的に深く交わったりするのはもう少し大きくなってからです。
そのため、人間関係を作ることに慣れていない子供時代には、誰かと気持ちを共有したいときなどに、現実の友達と心を通わせ合う代わりに、空想の友達と話すことがあるのです。

フロイト先生
イマジナリーフレンドの捉え方
では、イマジナリーフレンドの存在は子供の発達にどう関わっているのでしょうか?詳しく解説していきます。
イマジナリーフレンドは知性と創造性のしるし
幼い子が一人で喋っていることをプライベートスピーチ(Private speech)と言いますが、プライベートスピーチの頻度と学習能力や問題解決能力には相関関係があるといわれ、イマジナリーフレンドを持つ子はそうでない子の2倍、自由時間にプライベートスピーチをしたという調査結果があります。
また、イマジナリーフレンドを持つ子は理解力や複雑な構造の会話をすることに秀でているという意見もあります。
◇HSP( ハイリーセンシティブパーソン)との関係
HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる、人一倍敏感な子供や大人は、その敏感な感性ゆえに創造性が豊かです。そして彼らはイマジナリーフレンドを持つことが多いとされています。プロからアマチュアまで小説家50人を調査したところ、ほぼ全員がイマジナリーフレンドを覚えていたという結果もあります。
必要な子供には発達に欠かせない存在
意外なことに、イマジナリーフレンドを持つ子供は社交的で友達が多いことわかってきました。イマジナリーフレンドと話したり遊んだりすることは、現実の友達関係の練習になります。悲しいときに慰めてくれる存在でもあり、自分を客観的に見つめ直す存在としても役立っています。
イマジナリーフレンドという安全基地があるからこそ、現実の人間関係も安定すると言えるでしょう。
また、イマジナリーフレンドがいないといって発達に支障が出ることはありません。あくまでイマジナリーフレンドがいても心配はなく、またいないから変わっているということもないのでご安心ください。
成長とともに忘れていく?
イマジナリーフレンドの多くは子供の成長とともに忘れていくものなのでしょうか。
たいていの人は、大人になる途中でイマジナリーフレンドのことを忘れていきます。周りの人たちと人間関係を形成し、この世界にしっかり根を張って生きるようになると、自分だけの世界にいて守ってくれる空想の友達は必要なくなるのです。
けれども、大人になってもイマジナリーフレンドを持ち続ける人もいます。寂しさやストレスを感じていたり空想するのが好きだったりすると、自分を守り癒す手段としてイマジナリーフレンドが現れることがあります。
大人になってからイマジナリーフレンドが現れるときもある
イマジナリーフレンドはときには大人にも厳しい現実を生きるための力を与えます。世界大戦中、ドイツ軍に囚われたフランス兵捕虜たちは厳しい環境で過ごしていました。そんな中、ある牢獄の捕虜たちは、共通の13歳の少女であるイマジナリーフレンドを作り出し、自分たちの食事を分け、誕生日を祝い、牢獄の中で喧嘩や無礼なふるまいをしたときは少女に謝るなど、本当に少女がいるように過ごしたそうです。
あまりに真実味がある様子に、ドイツ兵が牢獄に少女がいると思って探しにくるほどでした。そして、他の牢獄では病死や自殺、発狂した人が出たにも関わらず、その牢獄のフランス兵たちは皆、正気を保ち全員無事に解放されたそうです。
イマジナリーフレンドを持つ人の心理について
イマジナリーフレンドが存在する子供や大人は、どういった心理でイマジナリーフレンドを持つようになった・持っているのでしょうか?具体的に解説していきます。
自分を認めてくれる存在が欲しい
「自分を認めてくれる存在が欲しい」それは自我が目覚め始めた小さな子供も感じることです。
人は理解されていないと感じると、自分の思いを誰かに聞いてもらい、共感し認めてもらいたいと思うものです。周りに聞いてもらえるような人がいない場合は、イマジナリーフレンドを出現させて自分を認めてもらうことで無意識的に心のバランスを取っているのです。
強い人間になりたい
自分が持っていないものや憧れるものをイマジナリーフレンドに求める場合もあります。体の弱い子は「心身ともに強いヒーロー」が、自信がなくておどおどした人には「自信満々で強気な人」が現れることもあるのです。
自分の弱い部分を克服して強い人間になりたいと思うとき、それを補ってくれるイマジナリーフレンドを持つことで、勇気がわいたり自信が持てるようになったりすることがあります。
自分にコンプレックスがある
自分に自信がない場合に、正反対の性質を帯びたイマジナリーフレンドができる場合があります。これを心理学用語では「補償」と呼び、自我の防衛機制の一つとなります。「補償」には、自分の抱くコンプレックスを克服しようと働きがあります。
自分とは真逆の性質や性格のイマジナリーフレンドを作ることで、内的葛藤を経て精神的な成長へとつながることもあるのです。
イマジナリーフレンドの姿・例
それでは、イマジナリーフレンドとはどのような姿をしているのでしょうか?人によってその姿はさまざまですので、ここでは一例を挙げていきます。
ぬいぐるみや人形
本人以外には姿が見えないイマジナリーフレンドもいますが、ぬいぐるみや人形のように何かの形があるイマジナリーフレンドもいます。イマジナリーフレンドは西洋では姿がない、逆に日本や中国では形があることが多いという意見もあります。
また、姿がない友達を「目に見えない友達」、姿のあるものは「物の擬人化」と分けて呼ばれる場合もあります。
お気に入りのぬいぐるみが話を聞いてくれたり、寂しい時にいつもそばにいてくれたりする存在となり、心が落ち着くのです。
アニメや絵本のキャラクター
イマジナリーフレンドは同年代の友達であることが多いのですが、なかには本人が憧れていたり、子供にとってそばに居て欲しいと思ったりした本やアニメのキャラクターが、イマジナリーフレンドになることがあります。
この場合、子子供とキャラクターのイマジナリーフレンドとが話し合うことで、「もし自分がそのキャラクターだったらどうするか」というシミュレーションができるのです。強い人間になるために、そのキャラクターを自分の中に取り込んでいると言えます。
身近な動物
身近にいる動物、例えば犬や猫、昆虫など、身近にいる動物の姿のイマジナリーフレンドもいます。それは現実の動物の姿ではなく、帽子をかぶった猫や、羽を持った少女の姿の蝶、おじいさんのようなカエルなど、擬人化された子供のオリジナルキャラクターであるイマジナリーフレンドが多いです。
学者の中では、妖精や妖怪は、このようなイマジナリーフレンドとの体験が伝承されたものではないかという意見があります。

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