思金神(オモイカネ)は、日本神話に登場する神様のなかでも知恵や政治を司る特別な存在です。
有名な天岩戸神話や国譲り神話では、その知恵を十分に発揮する姿が描かれており、この神様を抜きでは神話を語ることができないでしょう。
この記事では、オモイカネがどのような神様なのか、物語やご利益など、様々な観点から解説させていただきます。
思金神(オモイカネ)とは?

麒麟
オモイカネは、日本神話の中では二番目に生まれた神様とされる高御産巣日神(タカミムスビ)の子供です。
オモイカネの思金(兼)とは、「数多くの人々の知恵と思慮を兼ね備える」の意味があると考えられており、知恵や政治を司る神様とされています。
日本神話にも登場し、天岩戸という洞窟に天照大御神(アマテラスオオミカミ)が隠れた際、天照大御神を引っ張り出すための策を八百万の神に授けます。
また、国譲り神話では地上に派遣する使者の選定をおこない、天照大御神のブレインとしての姿が描かれています。
オモイカネの別称
オモイカネは、以下のような別称があります。
- 思兼神
- 八意思兼神(ヤゴコロオモイカネノカミ)
- 八意思金神
- 常世思金神(トコヨノオモイカネ)
また、オモイカネの別称である常世思金神は、常世から訪れて長寿・富・幸福をもたらすという意味があると考えられています。そのことから、オモイカネは「常世の神様」とも呼ばれています。
オモイカネの物語
オモイカネが登場する代表的な物語としては、先に触れているように「天岩戸神話」と「国譲り神話」があります。ここでは、オモイカネの物語についてご紹介します。
天岩戸神話では策の立案者として活躍
天照大御神は、自身が治めている高天原で弟の須佐之男命(スサノオノミコト)が乱暴狼藉の限りを尽くす姿に怒りと情けなさを感じ、天岩戸という洞窟に引きこもってしまいます。
太陽を司る天照大御神が洞窟に引きこもったことによって、外界は闇に覆われ、食物は育たず、病気が蔓延してしまいます。
この事態に困った高天原の八百万の神々は、どうにかして天照大御神を洞窟から引っ張り出そうと知恵を絞ります。この際、天照大御神を引っ張り出すための儀式の立案を行ったのがオモイカネです。
オモイカネは儀式の準備として、まず、常世の長鳴鳥(トコヨノナガナキドリ=鶏のこと)をなるべく多く集めて鳴かせ、邪気を祓います。次に、天の安河の川上にある鉄や鉱物を使って、伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)に大きな「八咫鏡(ヤタノカガミ)」を、玉祖命(タマノオヤノミコト)にたくさんの勾玉を長く連ねた「八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)」を作ってもらいました。
そして、祝詞の神である天児屋命(アメノコヤネノミコト)と占いの神である布刀玉命(フトダマノミコト)に頼み、天香山の牡鹿の肩の骨を焼いて太占(占い)をしてもらい、一連の儀式を行うのに最も良い日取りを決めました。

天照大御神
オモイカネはたくさんの神を統率していたことから、政治の神様として各地で祀られています。
オモイカネは天照大御神を天岩戸から引き出すために知恵を絞った神として覚えておきましょう。