口にした言葉が現実になる言霊の真実

太古から日本に存在する「言霊信仰」。「口にした言葉が実現される」理由は、近年、心理学や社会学によって科学的に証明されました。心理学を用いて「言霊信仰」の真実と心の在り方を読み解きます。
記事の目次
日本最古の和歌集『万葉集』には、日本という国を「言霊の幸ふ国」と美称した和歌が載っています。この一節は、日本古来の「言霊信仰」のことよりも、「日本人が持つ心の在り方の美しさ」を称えていることはご存知でしょうか。
「人の心の在り方」が良いと、どう「幸せな自己実現」につながっていくのか、一緒に掘り下げて考えてみましょう。
言った言葉が現実になる
私たち日本人の祖先は、自然や動物の他にも、あらゆるものに神が宿ると考え、敬い恐れ、感謝していました。
こうした考えは、神道で行われる「祝詞」にも見られます。
「祝詞」で使われる言葉は古い日本語と独特な調子で語るため、今の私たちには意味がわかりにくいのですが、その内容の基本は「いたるところに宿る神々を褒め称え、感謝を伝える」だけなのです。
つまり、これから「こうなったらいいなと思っているのでなんとかして下さい」という願い事を語っているのではなく、まだ起きていないことでも「こんな風に幸せになれたのは皆さんのおかげです」と慶びと感謝を伝えているのです。
こうした行為を、信仰という過度な思い込みと感じる方もいらるかもしれません。
しかし、近代の心理学や社会学では「目標を定めて結論を思い描いた発言」をすると「自分の思い描いた結果を手に入れやすい」科学的根拠が証明されているのです。
こうした考えは「自己実現」または「予言の自己成就」と位置づけされ、現在の教育現場にも反映されています。
言葉のラベリング効果
「自己実現」または「予言の自己成就」には、欠かせない要素が2つあります。
一つ目は、社会学者のハワード・ベッカー氏が提唱した「ラベリング論理」です。
「ラベリング」とは特定の人物や物事の評価を固定することです。
良い意味で固定(ラベリング)された評価があると、周囲にいる他者はその評価に従って、良い対応をする規則性を説いています。
例えば、物静かでめったに笑わない同僚のことを上司が「恥ずかしがり屋」、「笑うと笑顔が素晴らしい」と評価すると、周囲は「本当は笑顔が素敵で心根が優しい」という肯定的なラベリングをします。
ところが、「人の欠点を見つけては陰で笑っている」と上司が評価すると、周囲は「陰湿で嫌な奴」という否定的なラベリングを行うのです。
言葉のピグマリオン効果
欠かせない要素の二つ目は、教育心理学者のロバート・ローゼンタール氏が提唱した「ピグマリオン効果」です。
「ピグマリオン効果」とは、他者から期待された通りに結果を出そうとする人間の持つ性質のことです。
先ほどの例でいうと、消極的で笑顔が少ない同僚を、上司が期待を込めて「恥ずかしがり屋」、「笑うと笑顔が素晴らしい」と評価すると、その同僚は「積極的に人と話そうと努め」、「笑顔を向けて期待に応えようとする」のです。
逆に、「陰湿で嫌な奴」と評価されると、物静かだった同僚は「周囲に敵意を抱いて孤立し」、「自己否定の方向へ歩む」こともあるのです。臨床心理学者のカール・ロジャーズ氏は、そもそも人には潜在的な可能性を開発、実現して生きる傾向があると説いています。
「健全な人間は、人生に究極の目標を定め、その実現のために努力する」という言葉は有名ですね。
良い言霊を発して幸せな未来を
「周囲との関係を円滑に、互いを生かすにはどうすればいいのか」と考えると、おのずと相手の「良いところ」に目を向けていきますよね。
自分と周囲が幸せになる結果を心に描けたら、「選ぶことなく良い言葉を発せられる」ことでしょう。
しかし、どうしても心が動かなくて言葉を発することも難しい時は、神道の祝詞の「慶びと感謝」を思い出してみて下さい。
そして、心の中で「嬉しい」、「ありがとう」とつぶやいてみましょう。
私たちは万葉集に謳われた「言霊の幸ふ国」に生まれた人間です。
きっと、あなたの中で「嬉しくて、ありがたい」可能性が目を覚ますことでしょう。

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